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東南アジアにクールジャパンを届ける   Clozetteのコンテンツ・マーケティング

2020/05/12 投資先情報

今回は、当機構が2019年4月に出資したシンガポールのベンチャー企業「Clozette(クローゼット)」の東京オフィスをリードされている岩佐様にインタビューをしました。Clozetteは、東南アジアを代表するコンテンツ・マーケティング企業として、豊富な実績がある企業です。そんなClozetteが、どんなことを考え、どんな手法で「クールジャパン」をマーケティングしているのか、その一部始終を教えてもらいました。

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(写真提供:Clozette)

<インタビュイー>
・Clozette 東京オフィス シニア ビジネスデベロップメント マネージャー 岩佐和哉氏
・クールジャパン機構 投資戦略グループ ヴァイスプレジデント 川端太樹

<インタビュアー>
・クールジャパン機構 投資戦略グループ アソシエイト 萱内貴彦
(※インタビューは2020年3月実施)

Clozetteは東南アジアのコンテンツ・マーケティング企業

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ClozetteのWebサイト(トップページ)

萱内:はじめに、Clozetteの事業内容を教えてください。

岩佐:Clozetteは、シンガポール、インドネシアを中心に、マレーシア、フィリピンを含む ASEAN4ヵ国の20~30 代のミレニアル女性に対し、美容やファッション、旅、グルメなどに関わる分野で、各種コンテンツを制作・発信するマーケティング企業です。最新のトレンドを発信する自社Webメディア「Clozette」および日本に特化した「CoolJP」の運営、ならびにインフルエンサーのネットワークを各国現地に保有しております。2つのWebメディアでは、独自のコンテンツとインフルエンサーなどによるユーザー生成コンテンツ(UGC:User Generated Content)を併せ持つのが特徴です。それをプラットフォームとし、法人クライアントのニーズに応じたマーケティング戦略を展開しています。

萱内:インフルエンサーは何名ぐらいの規模にて展開されているのでしょうか?

岩佐:インフルエンサーに関しては、各分野のトレンドに対して意識の高い女性を中心に東南アジア域内で4,000名ほどのネットワークがあります。プロモーション企画ごとに、Clozetteが独自に保有しているインフルエンサーのデータベースから、実績や得意分野などに応じて、最適なインフルエンサーを選定できるようにしています。単にフォロワー数の多いインフルエンサーを起用するのではなく、クライアントのニーズに沿って、消費者の共感を呼ぶメッセージを発信できるインフルエンサーと組めるよう、影響力やフォロワーの属性なども把握しています。

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Clozetteの取組についてセミナーで講演する岩佐和哉氏

日本オフィスでは、日系企業による東南アジアマーケットに対するマーケティングをお手伝い

萱内:Clozetteにおける日本オフィスの役割は、どのようなものですか?

岩佐:東南アジア市場でビジネス展開を図りたい日系消費財を中心とした企業と、東南アジア旅行者を国内観光地へと誘致したい自治体やインバウンド関連企業などに対し、現地情報の提供やマーケティング戦略のアドバイスをしています。もう少し具体的にお話すると、現地の消費者向けの動向を探るための調査から、キャンペーン企画の策定と実施、ClozetteのWebサイト内にある日本に特化した情報セクションの「CoolJP」にてタイアップ記事の発信まで多岐に及びます。また、日本の現地情報をいち早く届けるなど「CoolJP」の編集機能も一部担っています。日本オフィスがあるメリットとして、東南アジア市場について、最新の情報が必要なクライアントに直接お会いしてスピードディーにお届けできる点が大きいです。

萱内:「CoolJP」はクールジャパン機構の出資以降に開始されたのでしょうか?

岩佐:その通りです。「CoolJP」はクールジャパン機構の出資後に開始されました。創業者CEOのRoger Yuen(ロジャー・ユアン)が、過去に日系企業の海外事業統括責任者として在籍していたこともあり、元々日本への思いが強かった。単に「品質に優れた日本製品」というステレオタイプでなく、日本の地方隅々にもプライベートで足を運び日本の観光資源の魅力や食文化、クラフトマンシップなどへの深い造詣に根ざし、いわゆる「クールジャパン」のポテンシャルをかねてより高く評価していました。実際に「CoolJP」開始以前から複数の日系企業と取引しています。そんな背景もあり、Clozetteとしても、非常にやりたかった取組の一つです。現在は、シンガポール在住の日本人編集長をはじめ、日本オフィスのシンガポール人スタッフ、東南アジア各拠点のスタッフ数名で運営しています。現在、我々にとって「CoolJP」とは、Webサイトの制作運営のみに留まらず、東南アジア市場への日系企業進出支援などを含めた事業やイニシアチィブ全体を総称します。

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日本に特化した情報セクション「COOL JP」では、日本の各地や製品を発信している

Clozetteの強みは「ローカル目線」(東南アジアの女性目線)でのコンテンツ企画や発信

萱内:「CoolJP」の運営にあたり、Clozetteが発揮している強みはどのようなものですか?

岩佐:「ローカル目線」でコンテンツの企画から発信まで、一気通貫でできることです。日系企業の多くが、日本でのマーケティングの成功事例を、そのまま東南アジアに横展開されようとしています。しかし、日本で「ウケる」コンテンツと東南アジアで「ウケる」コンテンツには違いがあります。その点を理解した企画や発信は、現地の企業であるClozetteならではの強みだと思っています。

萱内:その強みはどのように培われたのでしょうか?

岩佐:Clozetteは、東南アジアにおいて、10年近くのメディア運営実績があります。その活動の中で培ってきたナレッジを活用することで、東南アジアで「ウケる」コンテンツを企画できています。また発信の点に関しては、オリジナル編集記事のほか、UGCコンテンツも集まるため、トレンドをよりダイレクトに反映したキュレーションコンテンツが一つあります。また、ユーザーやインフルエンサーのネットワークを域内で構築してきたことで、様々な商品やサービスに対して率直な意見やフィードバックの収集を可能とし、これらがクライアントへの関係構築が強みへと発展しました。

萱内:現地のインフルエンサーに、日本のコンテンツはどのように受け止められているのでしょうか?

岩佐:先程も申し上げたとおり、Clozetteは美容やファッション、旅、グルメなどに関わる分野で発信しているのですが、そのどの分野においても日本のコンテンツはインフルエンサーの興味関心を呼んでいるように感じます。特に旅については、若い人たちは人気都市でショッピングしたりホテルに滞在したりするだけではなく、地方も含む様々な場所での体験を求めています。それは私達の目的の一つである「日本文化の発信」にも通じていますので、クライアントには、インフルエンサーが共感してくれるかどうかという視点を大切に企画・提案しています。

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インタビューを受けるクールジャパン機構 川端太樹(左)とClozette 岩佐和哉氏(右)

東南アジアへの「クールジャパン」発信には、そんなClozetteの強みが必要不可欠

川端:岩佐さんの仰るClozetteの強みは、東南アジアの方々に対して、「クールジャパン」をより効果的に発信していくに当たり、必要不可欠だと確信しています。これが、当機構がClozetteに出資した最大の理由です。

萱内:出資以降の「クールジャパン」の発信について、具体的にどのようなことを実施していますか?

川端:「CoolJP」を活用したプロジェクトがいくつか実現しました。高知県にあるイチネン農園のトマトのテストマーケティングや、シンガポール・チャンギ空港での飲食・物販複合型店舗「JW360°」。最近ですと、ある自治体をクライアントに、東南アジアで人気が高まっているスポーツツーリズムのプロモーションについて話を進めています。

萱内:それぞれのプロジェクトについて、具体的にどのような成果がありましたか?

岩佐:まずイチネン農園様のケースではシンガポール市場における生鮮トマト市場の現状と進出展開の機会を探るため、試食サンプリングを実施しました。現地消費者による実際の食し方や品質評価・参考希望価格の聴取を行えたのみならず、小売店に並ぶ競合商品や陳列の状況を伝えることで、日本市場との違いや共通点を洞察として把握することができました。

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イチネン農園のトマトを試食したシンガポールの消費者からは
たくさんの声がClozetteに届いた

岩佐:「JW360°」のケースでは、インフルエンサー招致による直接的なコミュニケーションの場を設けることにより、より臨場感溢れるコンテンツ投稿へと結び付き、同時に多くの露出とエンゲージメントを獲得しました。また、別途オンラインによる認知度調査を行い、当施設への集客での強みならびに課題を洗い出すことができました。

Clozetteにとってクールジャパン機構から出資を受けることの意義

萱内:スポーツツーリズムのプロジェクトについては、Clozetteとクールジャパン機構で、どのように協働されていますか?

岩佐:こちらのプロジェクトは、クールジャパン機構からのご紹介でスタートしました。

川端:クールジャパン機構内には、既存の投資先企業と日本の政府、自治体、企業などの連携を促進するチームが存在しています。そのチームのメンバーは、日頃から各所にネットワークを広げており、今回もその活動の中でネットワークが生まれた自治体と、Clozetteを繋げてくれました。

岩佐:その自治体とClozetteは、これまでネットワーキングができていなかったので、非常に助かりました。その後、先方の方々と面談をさせていただき、ニーズを把握し、弊社側でコンテンツの企画を開始しました。地域の観光資源のどのポイントをアピールするか、インフルエンサーの方々を通じてどのようにアピールするか、旅行代理店の方々にもアドバイスを頂きながら、企画を作成しました。コンテンツの企画に際しても、クールジャパン機構の方が壁打ち相手になってくれたり、資料作成をサポートしてくれたり、我々のようなベンチャー企業は人手不足が課題なので、こちらも非常に助かっています。なお、本件は新型コロナウイルスの状況に鑑み、残念ながら企画はストップしておりますが、収束してきた段階ですぐに再スタートできるように、内々では準備を進めておきたいと考えております。

川端:コンテンツの企画から発信までは、Clozetteがプロなので、クールジャパン機構としては、ネットワーキングの部分を主にお手伝いしています。私自身も、日々の活動の中で、事業者の方々から「東アジア一本足打法」の状況を打開するために、東南アジアの方々にリーチしたくても、うまくできていないという声をよく聞いています。ですので、Clozetteの存在は非常に有り難いです。

岩佐:今回の件に限らず、これまで、我々のような海外のベンチャー企業は、日系の大手企業から相手にしてもらえないことも多かったです。しかし、川端さん始め、クールジャパン機構の方々が、これまでClozetteがアプローチできていなかった企業に率先してドアノックしてくれることで、多くの企業にアプローチできるようになりました。クールジャパン機構のような、政府関連の企業と協働していることで、先方企業にも安心感が醸成されると思います。

今後はもっと地方の「良いもの」を東南アジアへ発信していきたい

萱内:今後はClozette×クールジャパン機構でどのような取り組みを実施していく予定ですか?

川端:私は、数年間クールジャパン機構に在籍していますが、これまでの活動を通じて、日本の地方には「良いもの」がたくさんあることを知ってきました。東南アジアの消費者に、これだけのリーチができるClozetteや「Cool JP」を通じて、もっと地方の「良いもの」を発信していきたいです。

岩佐:私もClozetteにジョインした理由の一つが、日本の「良いもの」を発信すること。ですので、今後もクールジャパン機構の力を借りながら、日本全国にドアノックしていき、もっともっと日本の「良いもの」を東南アジアに発信できるように尽力していきたいです。

萱内:現在新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、Clozetteとしてどのように事業に取り組んでいますか?

岩佐:弊社顧客の多くは東南アジア市場への事業展開を検討する企業、もしくは訪日インバウンド事業者です。このような状況ですので、東南アジアへ日本の製品のオンライン販売などの拡大を企図する企業へのマーケティング支援は引き続き注力しておりますが、インバウンドを中心に弊社との取組について必然的に自粛や延期の声も頂いています。しかしながら、コロナウイルスも世界的な感染拡大が収まれば、同時に反転攻勢に転じる場面が必ずやってくるだろうと推察します。ヒト・モノの国際的な流れが復調の兆しを迎える時機を逃すことのなきよう、日々新サービスの開発や準備に務めること。これが弊社のコロナ禍の中での処方箋かと考えます 。

(終わり)

萱内貴彦|投資戦略グループ アソシエイト

デロイト トーマツ コンサルティング モニター デロイトにて、幅広い業界に対して成長戦略の案件に従事した後、2019年5月、クールジャパン機構へ入社。同機構では、Sentai等を担当。

参考:クールジャパン機構 投資決定時プレスリリース

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